世に抽象的な歌詞があふれる訳

こんにちは。作編曲家のサカモトです。

 

 

前に僕が楽曲提供をさせて頂いた

バンドさんがいるのですが、

僕の曲がMV化されるようです!

 

 

デモ版を見せてもらったんですけど

かっこよすぎて軽く涙が出るくらい感動しました。

 

 

自分の曲に映像が付くのって

こんなに嬉しいことなんだと実感しました。

 

 

またMVが公開されたら再度告知しますね!

お楽しみに!

 

 

今回は、最近の歌詞についてある発見をしたので

それを書きたいと思います。

 

 

これはあくまで僕の個人的な印象なんですけど

最近の歌詞を見た時に抽象的なものが多いな

思うのです。

 

 

僕はフォークソングや昭和歌謡が

音楽人生のスタートだったので、

自然と情景が浮かぶ歌詞に多く触れてきました。

 

 

そのバックグラウンドを持って今の歌詞を見ると、

抽象的な歌詞やほとんどストーリー性のない歌詞が

世の中に多く出回ってるなと感じるのです。

 

 

歌詞を聴いて情景が浮かぶ方が聴いていて楽しいのに

と思うので、抽象的な歌詞がはびこるのが

ずっと疑問でした。

 

 

そんなある日、ある作曲家さんの作詞講座に行ったときに

あるワーク(作業)があったんですね。

 

 

それは歌詞のお題(コンペシート的なもの)を

出すから今から45分でワンコーラス

書いてくれというもの。

 

 

お題の内容とはこんな感じです。

秋に放送予定の学生青春アニメのOP。

相手に想いを伝えたいけれど伝えられない恋心、

気持ちを表現してください…。

 

 

歌詞を描くことに不慣れな僕はとても短時間では

歌詞を描くことは出来なかったのですが、

全体の総括で先生からこういうことを言われました。

 

 

まず前提として具体的なことは書いちゃダメ。

描いた内容がたまたまアニメとマッチしていたら良いけど

そうでなかった場合は確実に採用にならないから。

 

 

だから

コンペシートに書いてあること以外は書いちゃダメ

なんだと…。

 

 

なるほどなと思いました。

僕はここに世の中に抽象的な歌詞が出回る一つの理由が

あると思います。

 

 

基本的にアニメのOPやメジャーアーティスト、アイドルなどは

コンペを開催して一番良かったのを採用するのが一般的です。

 

 

コンペで落ちたら労働対価は0円なわけですから

当然受かりたいわけです。

 

 

だからコンペに出す人は皆当たり障りのないことを書いて、

広く浅くセーフポイントを持っておくわけです。

下手にチャレンジして落とされたくありませんからね。

 

 

結果、コンペでは抽象的な歌詞がたくさん集まり、

採用されます。

そして世の中に出ていくわけです。

 

 

このようなことを毎回繰り返していれば

世の中に抽象的な歌詞があふれて当然です。

 

 

その他にも時代的な背景が関係していると思います。

80年代までの歌詞は「憧れ」を表現していたのに対し、

90年代からはそれのアンチテーゼとして「共感」が重要視されました。

 

 

「共感」を重要視する流れは現在もまだ根強いですが、

これを重要視するあまり、

抽象的な歌詞があふれてしまうのかなと思います。

 

 

リスナーに共感してもらいたいのですから

ぼんやりと広く浅い部分を押さえていた方が

リスナーの「共感」に引っかかる可能性は多いですからね。

 

 

以上2点のような要素が重なって、

世の中に抽象的な歌詞があふれる結果になっているのかなと思います。

 

 

個人的には具体的な歌詞の方が(日記みたいのは除く)

むしろ曲の世界観が広がると思っているので、

そろそろアンチテーゼが起こってほしいです(笑)

 

 

まぁそれはまた別の話ですけれどね。

 

 

今回は抽象的な歌詞が世にあふれる訳を書いてみました。

皆さんももう一度立ち返って、歌詞のあり方について

考えてみると面白いかもしれませんね。

 

 

それでは!

 

 

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5 thoughts on “世に抽象的な歌詞があふれる訳

  1. こんにちは、初めてコメントを投稿させていただきます。突然で申し訳ありません。
    記事について感心しながら読ませていただきました。自分も最近の曲の歌詞は抽象的、というより観念的なものが多いなあ、、、と感じているので、多くの点で共感(と同時に納得)しました。最近の曲は君への『想い』だとか、あの日の『後悔』だとか、実体のないものを中心に据えた歌詞ばかりだなあと思っています。
    そこでお聞きしたいのですが、サカモトさんは「具体的な歌詞」として、どのようなものを想定されているでしょうか。個人的には、具体的情景を核としつつ、その外縁で抽象的心情を歌っている曲として、志村正彦時代のフジファブリック(「若者のすべて」「茜色の夕日」など)があるかなと思っています。もしかしたら「具体的」というところで想定しているものが違うかもしれないので、ぜひお聞きしたいと思いました。
    突然このような質問をして申し訳ありません。お時間があればでよろしいので、ぜひご意見を聞かせていただけたらと思います。長文失礼いたしました。

    1. コメントありがとうございます!
      共感していただけて嬉しいです。
      確かに「若者のすべて」も「茜色の夕日」も具体的なところもありますが、全体を通して抽象的な心情を歌っていますね。

      個人的に「具体的な歌詞」を感じるときは、「歌詞全体を通してドラマのように情景が展開していく」歌詞のことが多いです。
      例えば松本隆さんの書いた「時間旅行」や松任谷由美さんの「卒業写真」などは小説を読んでいるときのように
      登場人物がどこにいてどのようなしぐさをしているのかが情景として浮かんできます。
      さらに登場人物の心情が行動によって表れていることも多いため、よりドラマ性を生み出しているのかもしれません。

      また余談ですが、上記に挙げた曲などは登場人物の心情をダイレクトに伝え過ぎないところにも美学を感じます。
      「君のこういうしぐさが好き。こういう行動にキュンとくる」と気持ちを直接伝え過ぎず、あくまで「行動」での表現にとどめているところが素晴らしいと感じます。

      まとめると、「ドラマのように情景が展開していき、登場人物の心情を行動によって表現している」歌詞が具体的な歌詞であると思っています。
      あくまで個人的な意見ですが、その歌詞をそのままドラマにできるくらいの説得力を持った歌詞が良い歌詞なのかなと思います。
      あくまで参考になればうれしいです。

      1. ご返信ありがとうございます!
        ドラマ性、ないしストーリー性が想定されているということがよくわかりました。ありがとうございます! 登場人物が生きている一つのストーリー(=ドラマ)が浮かんでくる、そういう意味での具体性なのだと思いました。その点では、個人的に竹内まりやの「駅」が真っ先に思い浮かびました。これもまた昭和の曲であり、記事で考察されている通り時代性が反映されているのかなあと思います。
        心象をダイレクトに歌わずに、行為などに仮託して間接的に表す美学についても大いに共感しました。行為の他には情景への仮託などもありそうだと思いました(憂愁を夕陽で表すなど)。が、こちらはまだ使われているのに対して、行為の方はほとんど見ないなと思いました。多くの巧い表現が過去に使われているので、その点でもハードルが高くなるのかもしれません。
        個人的に「具体的歌詞の方が世界観が広がる」という点にもっともらしさを感じたので、いろいろと書かせてもらいました。乱文失礼いたしました。お答えいただきありがとうございます。邦楽歌詞の新領域が開拓されていくことを願っています。

  2. はじめまして。急なコメントで申し訳ございません。素晴らしい分析ですね。あともうひとつ、抽象的な歌詞が増えた要因として、アニソン、特にキャラクターソングがあると思います。2000年代頃からアニソンの中でキャラクター自身が歌う主題歌などが増えてきました。その際、当然キャラクター自身は作詞出来ないので専業作詞家の方に依頼されることが増えたかと思います。アニメの主題歌というのは、アニメ作品の世界観を表すものなのであまり具体的すぎると世界観にそぐわなくなるため、抽象的な歌詞が増えてきました。そういった作詞家の方々が有名になると、シンガーソングライターを目指している方が今度はその歌詞で歌詞を学ぶ方々が増えてきました。しかし、アニソンの抽象的な歌詞というのは具体的なアニメの世界観に合うように緻密につくられた歌詞であり、実際アニソンの作詞家を見ると非常に数少ないプロ中のプロの方がほとんどを占めます。そういった歌詞で歌詞を学ぶあまり、ただ真似たような読んでも何か腑に落ちない抽象的な歌詞が増えたように思います。抽象的な歌詞は具体的な歌詞より簡単だと思い込んでしまっている方もいらっしゃいます。普遍的な抽象的な歌詞で行間を読ませるためには具体的な歌詞と同等以上の音楽文学センスが必要だなと考えています。それが具体的な歌詞が減っているひとつの要因かなと思いました。とても深いお話ありがとうございます。長文乱文失礼しました。

    1. コメントありがとうございます!
      文章読ませていただきました。素晴らしい考察ですね!
      仰る通りで2000年代からアニメが台頭してきたことも影響がかなりありそうですね。

      まだまだ具体的な歌詞が多かった80年代前半に山下達郎が意味のない音触りの良い歌詞を歌ったように、この抽象的な歌詞が多い時代にアンチテーゼとして具体的な歌を歌う人がもっと出てきたら面白いだろうなぁと個人的に感じるところです。
      こちらこそ非常に勉強させていただきました。ありがとうございます!

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